良い夜を待っている

読んだ本の感想など。最近はPodcastで配信しています。

“良い夜を待っている”

2015-01-01から1年間の記事一覧

『氷』アンナ・カヴァン

長らく絶版になっていたサンリオSF文庫から時を経てちくま文庫から復刊された『氷』。カヴァン生前最後の作品。SFとも幻想文学ともとれる(プリーストの序文にはスリップストリーム、とある)この作品、のっけから眼前に迫る氷のヴィジョンに圧倒される。 ど…

『ストーナー』ジョン・ウィリアムズ

本しかなかった。 誇張でも冗談でも自虐でもなんでもなく、単なる事実として、本当に心の支えと呼べるものは、私にとって本、いわゆる文学しかなかった。本でなくても、絵でも、写真でも、音楽でも、園芸でも、なんでもいい、何かに心を奪われてすべてを持っ…

『亡命ロシア料理』ピョートル・ワイリ/アレクサンドル・ゲニス

料理なんて食べられればいいと思っていた 得意料理はカレーとシチューとポトフと鍋。茶色いものはだいたいおいしい。好きなものは何度でも繰り返し食べる。嫌いなものはない。持っている調理器具はおたまと鍋とフライパン。という、良くも悪くも食に対して雑…

『インド夜想曲』アントニオ・タブッキ

夜熟睡しない人間は多かれ少なかれ罪を犯している。彼らはなにをするのか。夜を現存させているのだ。 夜を愛し、夜に呪われている人々へ 寝苦しい夜にふとどこからか吹いてくる、色々な匂いをはらんだ風。それは隣家のカレーのにおいだったり、大学生の焚く…