良い夜を待っている

読んだ本の感想など。最近はPodcastで配信しています。

“良い夜を待っている”

2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

【2カ国目】『野蛮なアリスさん』ファン・ジョンウン:韓国①

近年の韓国文学の躍進はめざましいものがある。日本翻訳大賞の第一回と第四回ではそれぞれ『カステラ』と『殺人者の記憶法』が受賞しているし、近現代の作品がどんどこ翻訳されている。この躍進は、今回取り上げるファン・ジョンウンも訳している斎藤真理子…

『恥辱』J・M・クッツェー

インテリ性欲おじさんの失墜物語、と言ってしまうと自虐ギャグ漫画みたいだな。 前半はそのとおりで、ウワこんなおじさんキッツイ、キツすぎるキモい、と笑いながら読んでいたが、だんだんそのおじさんを取り巻く状況がしんどく重くなっていく。 中盤あたり…

【1カ国目】『脳天壊了』吉田知子:日本

アステリオンの旅行鞄、栄えある第1カ国目。まずは日本から。 今回選んだのは吉田知子の短編選集。完全にタイトル勝ちの『脳天壊了(のうてんふぁいら)』。意味としては「大馬鹿者」とか、「頭イカれちゃってる」「イっちゃってる」というようなところ。Wi…

アステリオンの旅行鞄:荷造り

ではさっそく、旅に出る準備をしよう。 荷造りにはある程度の秩序が必要。使用済みパンツと新しいパンツは別の袋に入れたいし、ちょっといいレストランに行くときのドレスと、海に行くときのTシャツはごっちゃにならないようにしないといけない。最初にどの…

アステリオンの旅行鞄:はじめに

この地球上に「国」はいくつあるのか。 外務省のデータでは日本を入れて196ヵ国。でもこれはあくまで「日本が認めた国の数」であって、その他の独立国や地域などを入れると206ヵ国。そしてそれらもどこまでを「国」とするのかで変わってくる。このデータを見…

『イエスの幼子時代』J・M・クッツェー

キリスト教を基底としての寓話・・・というのは正直私の知識不足もあってよくわからなかったけど、するする読める反面、大いなるもやもやが残る作品だった。この作品内で描かれる世界はパッと見、狂ってると思いきや、実はいまの日本社会と大差ないというか…