2019-01-01から1年間の記事一覧
グリオールは巨大な竜。その大きさは背中までの高さが750フィート(約228m)、長さが1マイル(約1.6km)ほどもある。かつて魔法使いがグリオールを殺そうとして失敗し、完全に殺すことはできなかったものの、竜の身体は麻痺して動かなくなった。何千年もの…
村上春樹は良い読み手だ。 著名な作家が良い読み手とも限らないが、この本を読んで改めてそう思った。これまで読んできた村上作品の血肉となっているのは主に海外文学(サリンジャー、チャンドラー、フィッツジェラルドなど)だと思っていた。それは確かにそ…
3〜4年前くらいからだろうか、ホロコーストに関する本を細々と読み続けている。理由は世界でもおそらく最も有名な大虐殺の歴史だということ、その歴史を踏まえた文学作品が数多くあり、歴史を学ぶことでよりそれらへの理解を深めたいという気持ちがあったか…
写真や映画を見たとき、「ああ、この瞬間を切り取るとは!」とその鮮やかさにハッとする時がある。映像だととくにそれが顕著だが、文学でもその瞬間はあって、まるで新鮮な果物を研ぎたての刃物で半分に切ったときのような、毛羽立った表面からは想像もし得…
発売が決定してからずっとずっと楽しみにしていたアンソロジー。愛してやまない『天冥の標』の著者、小川一水も参加となれば買うしかない!!ということで、SFマガジンの百合特集から助走をつけてきた身としては、本当に発売が嬉しかった。そもそもジャンル…
「文学の意義」「文学部の意義」、よく問われるこれらのキーワードに対して苦々しい思いを抱いているのは私だけではないだろう。文学を学ぶこと、文学を楽しむことになんの意味があるのかと、「何の役にも立たない」「ただの娯楽」と蔑まれることもある文学…
池澤夏樹編の『世界文学全集』にも収められているボフミル・フラバルの代表作がこのたび文庫化!ということで、わたしにとっては初のフラバル作品。 この作品はチェコで働く若き給仕、ヤン・ジーチェが百万長者を目指し、エチオピア皇帝に給仕するまでに上り…
――君を取り囲む凡ての世界が幽霊のようにまやかしである可能性はそうでない可能性とまったく同じにあるんだ。 この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君。p.92 はじめての京極堂。分厚すぎる(『姑獲鳥の夏』は比較的薄い方)、ペダンチック、日本…
ゴーゴリの作品は青空文庫にも入っていて無料で読めたり、いろいろ翻訳が出ている。私が光文社の古典新訳を選んでみたのは、「落語調で訳されている」というのが(賛否両論あるみたいだが)なかなか挑戦的で面白そうだなと思ったから。あと来るべき『死せる…
ウフコックの死が約束されているアノニマス、第4巻。スクランブルの頃からずっと読んでいるけれど、バロットの成長っぷりに目頭が熱くなる。世界の何もかもを諦めていた彼女が、ウフコックやイースターズ・オフィスの仲間たちと出会って、未来を自分で選択す…
イタリアの鬼才、トンマーゾ・ランドルフィの短編集。奇想天外なお話、どれも質感が違っていてバリエーション豊かで面白かった! その中でも「カタチがないものに別の特性を付与する」作品が私は好きだな。 「『通俗歌唱法教本』より」は人間が喉から発する…
ロシア・シンボリスト詩人、ブリューソフの散文作品集。そもそもシンボリズムが何なのかイマイチわかっていないが、わかっていなくても十分に楽しめた。この作品集は全編通して一般的には二項対立するとされるもの、例えば「虚像」と「現像」、「夢」と「現…
『容疑者の夜行列車』同様、二人称短編(連作?)小説。多和田葉子の小説は続けて読むと多和田葉子酔い(?)するので一気に複数冊は読めないのだが、この作品は比較的軽めなので続けて読んでも大丈夫そう。「あなた」がアメリカ各地を旅していくのだが、行…
俺たちの住むこの国は、バーガー調理係、ブリトー調理係、タコス調理係、カクテル係、無愛想なレジ打ち、介護人、犬の散歩屋、看板を振る自由の女神、路上生活者、あるいは物乞いたちの国になった。 俺にはちっとも超大国のように聞こえない。p.287 「戦争と…