“良い夜を待っている”

読書

『イエスの幼子時代』J・M・クッツェー

キリスト教を基底としての寓話・・・というのは正直私の知識不足もあってよくわからなかったけど、するする読める反面、大いなるもやもやが残る作品だった。この作品内で描かれる世界はパッと見、狂ってると思いきや、実はいまの日本社会と大差ないというか…

『紙の民』サルバドール・プラセンシア

愛すべきダメ男ものがたり ダメ男ブンガクは数多くあれど、(私が好きなものだとラウリー『火山の下』、パワーズ『オルフェオ』など)『紙の民』はとことんダメ男の情けなさを物語、いや、物語を越えてこちら側にはみ出してくる形で楽しませてくれる小説だ。…

『氷』アンナ・カヴァン

長らく絶版になっていたサンリオSF文庫から時を経てちくま文庫から復刊された『氷』。カヴァン生前最後の作品。SFとも幻想文学ともとれる(プリーストの序文にはスリップストリーム、とある)この作品、のっけから眼前に迫る氷のヴィジョンに圧倒される。 ど…

『ストーナー』ジョン・ウィリアムズ

本しかなかった。 誇張でも冗談でも自虐でもなんでもなく、単なる事実として、本当に心の支えと呼べるものは、私にとって本、いわゆる文学しかなかった。本でなくても、絵でも、写真でも、音楽でも、園芸でも、なんでもいい、何かに心を奪われてすべてを持っ…

『亡命ロシア料理』ピョートル・ワイリ/アレクサンドル・ゲニス

料理なんて食べられればいいと思っていた 得意料理はカレーとシチューとポトフと鍋。茶色いものはだいたいおいしい。好きなものは何度でも繰り返し食べる。嫌いなものはない。持っている調理器具はおたまと鍋とフライパン。という、良くも悪くも食に対して雑…

『インド夜想曲』アントニオ・タブッキ

夜熟睡しない人間は多かれ少なかれ罪を犯している。彼らはなにをするのか。夜を現存させているのだ。 夜を愛し、夜に呪われている人々へ 寝苦しい夜にふとどこからか吹いてくる、色々な匂いをはらんだ風。それは隣家のカレーのにおいだったり、大学生の焚く…