前編↓
後編↓
『塵に訊け』がやっと新訳で出たぞ〜〜〜〜〜祭りだ〜〜〜!!
ということで、訳者の栗原俊秀さんをお迎えした新春スペシャル。
前編はあんまり『塵に訊け』の話はしてないんですが笑、我々とファンテとの出会いについておしゃべりしています。
後編では満を持して、『塵に訊け』の感想を栗原さんに剛速球で投げつけています。
この機にぜひみなさんも、ファンテの著作を読んでみてほしい。
どれかひとつでも。きっと心に響くはずです。
栗原俊秀さんプロフィール
1983年生まれ。翻訳家。
イタリア国立カラブリア大学文学部専門課程 近代文献学コース卒業
京都大学大学院人間・環境学研究科 博士課程 研究指導認定退学後、イタリア語作品を中心に翻訳活動を行っている。
主な訳書に、ジョン・ファンテ『塵に訊け』、『ロサンゼルスへの道』、アマーラ・ラクース『ヴィットーリオ広場のエレベーターをめぐる文明の衝突』、アンドレア・バイヤーニ『家の本』、マヌエレ・フィオール『秒速5000km』、ゼロカルカーレ『コバニ・コーリング』など多数。
カルミネ・アバーテ『偉大なる時のモザイク』(未知谷)で、第2回須賀敦子翻訳賞、イタリア文化財・文化活動省翻訳賞を受賞。
栗原さん翻訳のファンテ著作はこちら。
そして、栗原さんを教えてくれたガネーリ先生ありがとう。
*2024/2/3追記・新情報
なんと!栗原さんの恩師、マルゲリータ・ガネーリ先生の文章が、栗原さんの訳で読めます!
前編で少し触れられていた、イタリア系アメリカ文学、いわゆる「移民文学」についての論文です。ファンテ作品でも見られる、アメリカへ移住したイタリアルーツの人々が感じる「(アメリカでの)居心地の悪さ」という点についても触れられています。「世界文学」「移民文学」に興味のある方はぜひ。
イタリア系アメリカ文学とイタリア | マルゲリータ・ガネーリ
立命館学術成果リポジトリ
一部引用↓
第二次世界大戦の直前,最中,あるいは直後にアメリカ人として生まれ,大多数が,19 世紀末にアメリカにやってきた移民から数えて第三世代に相当するこうした書き手にとって,イタリア系アメリカ移民として受け継いだ遺産について書くことはなによりもまず,劣等感を振り払い自尊心を回復する歴史的な過程をたどりなおすことでもあった。第三世代の試みはしばしば,第二世代とのあいだに衝突を引き起こした。第二世代はほとんどつねに,アメリカで生きる居心地の悪さを克服し,アメリカナイズを加速させるために,外国人としての自身のルーツを抑圧しようとしてきたからである。これは,ホミ・バーバ,エドワード・サイードらをはじめとする理論家が「擬態(mimicry)」と呼んだ現象である。被植民者(被支配者)は「擬態」をとおして「植民者の習慣・風習を模倣し,あるいはむしろ,植民者にそうするよう仕向けられ,結果として,服従的な地位から脱して」いく。実際,家父長的家族モデルに代表される,移民の出身国に認められる人類学的風習と,目まぐるしく移り変わる 60 年代のアメリカ文化の対立が,しばしば世代間の衝突という形で表れたことは偶然ではない。そのために,男性性および女性性の再定義というテーマが,ふたつの世代の対立の大きな争点となった。
事実,近年においては,イタリアとアメリカを股にかける新たなコスモポリタン作家による執筆活動が,質・量の両面において,たいへん勢いを増している。いまや,大西洋の両岸を活躍の場とする遍歴のイタリア人は数多く存在する。知識人のなかにそうした例を求めるなら,イタロ・カルヴィーノ,ウンベルト・エーコ,あるいはすでに言及したレモ・チェゼラーニの名が挙げられるだろう。今日では,アメリカに暮らして執筆に取り組みながら,イタリアにも生活の基盤を置いている大勢の作家集団が存在する。近年における移民とは,もはや一方通行の現象というよりは,構造的な往還運動として捉えられるべきである。
ラジオで出てきたファンテ以外の栗原さんの訳書はこちら。
※他にも栗原さんの訳書はたくさんあるので、気になる方はぜひ検索してみてください。
直近の『塵に訊け』イベント情報はこちら。
蔦屋書店でのイベントは2024年3月2日(土)17:00〜です。詳細は下記。