良い夜を待っている

読んだ本の感想など。最近はPodcastで配信しています。

“良い夜を待っている”

『裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾ ートナイト』宮澤伊織

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ネットロア×怪談×強い百合、待望の第2巻。
今回もごちそうさまでした。

 

巻を重ねるごとに空魚は鳥子にゾッコンになっていくな。虜だけに…
それにしても空魚は鳥子に見惚れすぎじゃないか。顔と身体が良い女は百合力がつよい。サービスシーン(何の?)多かったな〜。

 

空魚と冴月、それぞれが抱く感情は要するに嫉妬以外の何物でもないと思うが、それを嫉妬と短絡的に描くのではなく、誇張的に百合オタク文脈で言うならば「大いなる感情のうねり」として描いているのはさすが「百合に人間にしてもらった」作者が描いているだけのことはある。何故か人間になった途端Vtuberのワオキツネザルになってるけれど。

空魚にとって鳥子はかけがえのない存在であることは間違いなくて、本人もそれを自覚もしているし鳥子に伝えてもいるけれど、鳥子はいつもどこかで冴月のことを考えていてまっすぐ空魚を見たと思ったら、空魚の元から居なくなろうと(例えそれが仮定の話でも)するのはずるいなぁ、業が深いなぁ、と思う。鳥子にとっても空魚はかけがえのない存在なんだけれども。だからこそ。

鳥子のこの振る舞いにはめちゃくちゃ既視感があって、それは私が好きな人から離れていくときの動機と似ている気がしたからだ。私は誰かと親密な関係を築けるな、という段階に来ると怖くなってそれを手放してしまうことがよくあるのだけど(めちゃくちゃ失礼)、それはこの関係維持を担保できるものが自分にはない気がして怖くなってしまうから。それがとても失礼で自分勝手で傲慢な行動だと分かっていても、自分の精神を守るために、つい「そっち側」に行こうとしてしまう(今はだいぶ大人になったのでこういうことはほとんどないが若いときはそれはもう目も当てられなかった)。

 

この行動原理が鳥子に当てはまるのかは分からないけれど、鳥子は空魚を失うくらいなら自分から居なくなりたい、という後ろ向きの積極性に突き動かされてるのかもしれない。

 

鳥子が本当に恐怖しているのは裏世界よりも、冴月を失ったトラウマもあり、空魚を失うことなのかな。失いたくないひとができるのは、それはそれは怖いことだから。

 

この先鳥子がその恐怖に打ち勝つのか、空魚と冴月が対峙したときどうなるのか、3巻もとても楽しみ。

 

空魚は素直で良い子なんだよなぁ、どうかその真っ直ぐな愛情を鳥子が(結果はどうあれ)真正面から受け止めてくれますように…

 

 

おまえが言ったんだぞ 。共犯者って 、この世で最も親密な関係だって 。

 

 

裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト(ハヤカワ文庫JA)

裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト(ハヤカワ文庫JA)